5.
「手伝います。」
背後から声をかけられて振り返ると、女の子が立っていた。
「あ、ありがとう。でもいいの? ずいぶん盛り上がってるけど。」
リビングで大笑いしている夫と学生たちを見やって聞く。私は夫の学生たちが来ても、同僚が来た時と変わらず台所に立っていることにしていたけれど、女の子の学生は手伝ってくれることがよくあった。そしてそんな女の子たちに促されて男の子たちが腰を上げることもあって、そんな光景は微笑ましかった。狭い台所なので、私の他に三人も並ぶといっぱいになってしまうのだけれど、そんな中でころころと笑い声をあげながら学生たちが夫の大学での様子を率先して話してくれる。私は肩をきゅうきゅうに狭めながらも一緒になって笑ってしまうのだ。
「いいんです。男ばっかだし。」
けれど確かに、今日は彼女以外は皆、男の子だ。
そう言ってぱっと咲いた笑顔がとても可愛らしかった。そう、じゃあ、と私が少し端に寄ると、隣に立って私が切っていた野菜をバランスよく盛り付け始めた。
「本当、奥さん綺麗ですよね。私なんか、かなわないな。」
ぽつりと呟くように言ってため息をついた。私は思わず吹き出し、その愛らしい横顔を見て笑ってしまった。
「何言ってるの? そんなに可愛くて若くて明るくて、キラキラして輝いてるのに。」
彼女は上目遣いで私を見た。
「本当に先生とお似合いです。結婚して何年目なんですか?」
「今年で三年かな。」
「プロポーズは先生から?」
「そう。」
「ふうん。」
彼女は軽く唇をとがらせた。若者らしく一つ一つの表情が生き生きして、私には眩しかった。
「いいな。」
独り言のように口の中でそう言ってからぱっと顔を上げて、また弾けるような笑顔を作った。咲いたばかりの向日葵のように。
「これ運んでいいですか?」
「あ、どうぞ。お願いね、ありがとう。」
盛り付けたサラダの大皿を両手で持ってくるりと私に背を向けた。バレエを習いたての少女のように翻したスカートが黄色かった。だから向日葵みたいだと思ったのかもしれない。