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ドレス問題についての所感

最近、あまり開かない個人アカウントのTwitter(YYMusicChannelのアカウントは真面目にやってるよ!フォローしてくれよな、頼むから)を眺めていると、タイムラインでちょっとホットな話題らしい、いわゆる「この時代、もう女性音楽家だからといってドレスを強要される筋合いはない」というような内容がチラホラ目に入ってくる。Twitterで呟くともしかしたら何処かに角が立つかもしれないのでここにメモ程度にひっそりと残しておきます。


結論から言うと、まあ好きな服着たらいんじゃね、というのが感想。私もパンツで本番を踏んだことなんてごまんとあるし、シチュエーションによって服は慎重に選ぶ。

誰かに恋愛対象として見られた時とモラハラ男を呪う時以外、他人の性別を気にしたことがないので、ジェンダーのことはよくわからん。ドレスを着るのが苦痛なら着なきゃいい。歴史的な背景が…なんて言っても仕方ない。


ただ、私はドレスが好きなのでそのへんに不便さとか、不快を覚えたことは特にない。どれくらい好きかというと、毎年ディオール、シャネル、ヴァレンティノ、ジャンバティスタバリ、エリーサーブ、グオペイ、あたりのオートクチュールのショーはチェックするくらい。ちなみに予定もないのにブライダルコレクション特集とかも見ちゃう。


ドレスは、(男性の場合は、スーツかな)とりあえず、「洗練されている」という印象をに他人に与える土壌に上がる為に一番手っ取り早いツールだと思う。音楽家っていうのは多くの場合、洗練されている必要がある。何故って、音楽が洗練されていなければプロじゃないから。人前で音楽を披露するのにダサかったら、聴覚情報も視覚情報に引っ張られて、勿体ないことになる。私はものっすごい感動したリサイタルの、だけどその演奏家のクリーム色のドレスからずっと黒い下着が透けて見えててなんともいえない気分になったことがある。それさえなければ100%心打たれたはずだったのに、聴覚情報が邪魔されちゃうんだ。


まあこれはドレス着たのに…な例だけど、似たような「これで装いが素敵だったら」という思いは何度もした。

もっとはっきり言うなら、ドレスを着ないコンセプト系の衣装セレクトは、大体ダサい。ごめん。素敵なケースを見たことない。いやごめん。ダサい。


いやでもね、それって当然のことだと思う。だってそりゃ、知らないんだよ、ファッションなんか。


音楽家は音楽ばかりに打ち込んできたせいか、ファッション感覚が完全に残念な人が本当に多い。普段の服装を見ると本当にびっくりする。何故それを組み合わせた?!それいつのコンサバ?!そんなのどこで売ってるの?!なんて言葉を飲み込むのは日常茶飯事。だけど別にそれは悪い事じゃない。だって皆なりふり構わず音楽に時間を費やしてきたんだもの。自分がどんな音出すかは知ってても、自分の体型なんか知らんのよ。そういう生き物なの。


ただ、だからこそ、ドレスが必要だったと思う。


「一枚綺麗なドレスを買って、キラキラしたアクセサリーをつければとりあえずいい感じでしょ!」


これは一旦、間違いない。生活の一切を音楽に注ぎ込んでいても、無難なドレスを持っておけば、一旦安全に洗練が成立する(…と、多くの人を騙くらかすことができる)。


「成立していない」ことの罪深さは音楽家こそよく知っている。「好きな服を着て演奏するんだ!」と息巻いている音楽家も、成立していない音楽を聴いたら絶対怒る。もっと勉強すべきだと言う。

それなのに、どうしてファッションはそうじゃないと思うんだろう?ステージに上がるのに。


演奏家は素敵に弾けない曲はプログラムに組まない。全く同じことで、ステージでは素敵に見えないファッションを纏うべきじゃない。

好きな服を着るのは自由だ。だけど自分の「好き」を知るには勉強が要る。音楽がそうなように。


かくいう私もファッションをよく知らない。ドレスもそんなにいいものは持っていないし、枚数もごく僅かだ。普段は楽しか勝たんとくたびれたスウェットを着て爆奏している。でも、カールラガーフェルドの訃報に泣いたくらいには、それにいかに価値があって、敬意を払うべきものかくらいのことは知っている。


私はドレスを着続けると思う。

今、エメラルドグリーンの素敵なドレスが見つからなくて頭を抱えている。





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